🎐 潯珩亂筆 155 - ✨盲点

入社したばかりの頃、今思い出すと笑ってしまうようなことをしたことがある。

私は「無限マッチ」という小さな道具を買った。ライターではなく、金属の細い棒を引き抜いてこすれば火がつき、戻せば消える仕組みのものだ。風でも消えにくく、何千回も使える。小さくて機械的な感じがして、しかも値段も手頃で、なかなか面白いデザインだった。

それが嬉しくて、会社で隣に座っていたイタリア人の同僚に見せた。

こすった。
小さな火が出た。

すると彼女はびっくりして叫んだ。「オフィスでそんなことしちゃダメ!」

私はその場で固まった。本当に思いつかなかったのだ。

私の頭の中では、それはデザインの面白さだった。彼女の頭の中では、それは火災報知器、保険の規定、非常口の問題だった。

同じ行動でも、見ている世界はまったく違う。

あとから気づいたことがある。多くの「間の抜けた行動」は、人が愚かだから起こるのではない。場の感覚が開いていないだけなのだ。

私は物の面白さに夢中になっていた。 彼女は制度やルールの世界に生きていた。

盲点というのは、火が見えるかどうかではない。 ルールが見えているかどうかだ。

場の空気や状況を自然に感じ取れる人もいれば、外側の境界にあまり敏感でない人もいる。

盲点というものは、たいてい周りの人のほうが先に気づく。

そして本人は、だいたいいつも最後に知ることになる。



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