🎐 潯珩亂筆 147 - ✨すぐ返信しなきゃという圧力

昔、手紙を書く時代には「待つ」という時間があった。

書いて、封をして、送って、そして返事を待つ。その「待ち時間」自体が、すでにコミュニケーションの一部だった。

その後にメールが登場した。早くなったけれど、まだどこかに正式さが残っていた。数時間後や翌日に返信しても問題はなかった。やり取りは「進行中」であって、追い立てられているわけではなかった。そのあとチャットが現れ、「既読」が付き、「入力中…」まで見えるようになった。

「既読スルー」は罪のように扱われるようになった。相手はあなたがオンラインであることを知っている。その静かな圧力は、じわじわと重くなる。

以前、インド人の同僚がいて、仕事でも WhatsApp を多用していた。普通の会社なら Slack や Teams を使い、少なくとも「仕事の場」という境界がある。でも彼はスマホの WhatsApp を使う。それがインドでは一般的なのかもしれない。しかし問題は、時差や休日や休憩時間まで、スマホの通知一つで仕事モードに引き戻されることだった。一つ返せば、また一つ来る。終わらない。返信しなければ失礼に感じる。返信すれば、また巻き込まれる。それは対話ではなく、拘束に近かった。

さらに厄介なのは、「即レス」が礼儀だとされること。遅い返信は態度が悪いと見られる。でも即レスには熟考がない。人間の脳はリアルタイム処理装置ではない。間が必要だ。消化が必要だ。「少し考えさせてください」という余白が必要だ。

今のチャットツールは、私たちが常にオンラインで、常に利用可能で、常に準備万端だと想定している。でも人間はサーバーではない。さらに音声メッセージは強烈だ。60秒の緑の吹き出しが連続する。スキップもできず、流し読みもできない。相手が1分話せば、こちらも1分拘束される。それは便利ではなく、時間コストの転嫁だ。

気づけば、人は「ソーシャル自己防衛」を覚えた。
· 👍
· OK
· LOL
· 笑 WW
· うん
· スタンプ
ちょうどいい温度で返す。広げない、深めない、新しい話題を作らない。まるで盾を持つように。消えてはいないけれど、踏み込みもしない。

私は以前、即レス型の人間だった。でも今はやめた。即座に反応する義務を手放し、相手にもそれを期待させない。それは冷たいのではない。自分のリズムを取り戻すことだ。

私たちを疲れさせるのはメッセージの数ではない。すべての通知の裏にある「今すぐ返して」という無言の圧力だ。

懐かしいのは、ゆっくりした時代ではない。安心して「あとで」と言えた自分だ。

返信は反射である必要はない。選択であっていい。守りたいのは時間ではなく、返信の主導権なのかもしれない。



—— 🎐 潯珩亂筆 | XC Scribbles · 壹佰肆拾柒 CXLVII 💬

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