🎐 潯珩亂筆 084 - ✨日本のトイレと、戻れなくなった文明

二十年以上前、初めて日本を訪れたとき、友人の家に泊まった。  そして人生で初めて、'まるで宇宙技術のようなトイレ'に出会った。

トイレの水タンクの上には、小さな蛇口がついていた。  流すと、まず手洗い用の水が出て、  その水が再びタンクに戻り、次の洗浄に使われる。

私はしばらく動けなかった。

高級だからではない。  合理的すぎて、少し恥ずかしくなったからだ。 派手さも主張もない。  ただ静かに、水の無駄を減らす仕組み。 そのとき初めて気づいた。  デザインとは賢く見せることではない。  世界を無駄に傷つけないことなのだ。

本当の衝撃は、座った瞬間に来た。 まだボタンを理解する前に、  トイレが音楽と流水音を流し始めた。 後で知った。  日本の家は狭く、壁が薄い。  この音は快適さのためではなく、尊厳のためだった。

このトイレは身体をケアしているのではない。  人間としての気持ちを守っていた。

当時、私は日本語が読めなかった。  お尻に水がかかるイラストだけが目に入った。

爆弾を解除するように、慎重にボタンを押した。

次の瞬間——  強烈な水流が下から直撃した。 私は便座から跳ね上がり、  水は天井まで飛んだ。 下半身裸のまま、  敵意むき出しでトイレを睨んだ。 その瞬間の感想は一つ。  これは先進技術じゃない。兵器だ!

本当に怖かった。

でも人間はすぐ慣れる。 数日後、恐怖は慣れに変わり、  慣れは快感になった。

冬、温かい便座に座り、  優しい温水で行われる文明的すぎる下半身スパ。 そのとき理解した。  なぜ日本のトイレットペーパーは薄いのか。 拭くためじゃない。  水を吸うためだけの、  静かな締めくくりなのだ。

それ以来、日本でのトイレは私にとって一番好きな時間になった。 用を足す場所ではなく、  「世界に大切にされている」と感じる小さな部屋。

帰国後、違和感は消えなかった。 冷たい便座、  無骨な紙を手にしながら思った。 私は、より良い文明を知ってしまった。

海外赴任を断る日本人がいると聞いた。  理由は給料でも治安でも文化でもない。「トイレが無理」。

完全に理解できる。

一度基準が上がると、  もう戻れない。優れたデザインの恐ろしさはここにある。 感動させることではなく、  後戻りできなくすること。 体験を変えるのではなく、  世界への最低期待値を引き上げてしまう。

私が恋しいのは、日本のトイレだけじゃない。

人間の弱さを真剣に受け止め、  そこから設計した文明そのものだ。



—— 潯珩亂筆 | XC Scribbles · 捌拾肆 LXXXIV 🚽

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