🎐 潯珩亂筆 058 - ✨ 描くのではなく、消していく

私はずっと、  絵を描くことは「足し算」だと思っていた。

真っ白なキャンバスに、  絵の具を一層ずつ重ねていく。  色が増えるほど完成に近づき、  「すごい作品」になる気がしていた。

でも数日前、  頭を軽く叩かれたような感覚があって、  突然気づいた。

絵がうまい人は、  実は「影」を描いているのだと。暗くなるべき場所を先に置き、  描かれなかった部分は、  脳が勝手に補ってくれる。全部を描く必要なんてない。  余白は、もともと語る力を持っている。

そのとき、  Photoshopのマスクを思い出した。  足し続けるのではなく、  いらない部分を消していく。 あなたは何かを増やしているのではない。  何を残すかを選んでいる。

そう思ったら、  少し可笑しくなった。  人生は、ちょうどその逆をしている気がしたから。

私たちは必死に自分にレイヤーを重ねる。  肩書き、役割、ラベル、  「こうあるべき自分」、  「こう見えるべき自分」。  重ねすぎて、  呼吸さえ重くなる。

でも、もし人生も一枚のキャンバスなら?  やるべきことは、  何かを足すことではなく——  不要な層を下ろすことかもしれない。

使っていない肩書き。  無理に被った大きな帽子。  本当は自分のものではないラベル。

すべて消してみる。  残ったものの方が、  ずっとはっきり見えてくる。

もしかすると、  自分になるということは、  足し算ではなく、  静かで、でもはっきりとした引き算なのかもしれない。



—— 潯珩亂筆 | XC Scribbles · 伍拾捌 LVIII 🎨

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