🎐 潯珩亂筆 029 - ✨善意が落とす影

優しさの中には、  砂糖で包まれた悪意があることがある。  そして、悪意に見えるものが、  ただ善意の影であることもある。

あの日、  私は街角で櫛を売るおばあさんを見かけた。  名木だとか、効能だとか、エネルギーだとか——正直、嘘だとわかっていた。

それでも私はお金を出した。  櫛のためじゃない。 彼女の目にあった「今日は何も売れないかもしれない」というあの不安のために。

数日後、  少し残酷なことに気づいた。

私は善いことをしたつもりだった。  でも、その善意が次の嘘を支える理由になったかもしれない。

助けたつもりが、  「この話し方なら売れる」という静かな証明を与えてしまった可能性。

心は優しかった。  結果は、そうとは限らなかった。

世界は、そんなふうにできている。  善は影を生み、  悪はときどき、  生き延びるための形をしているだけ。

善と悪は別々の道じゃない。  同じ一本の線の両端だ。  片側を強く踏めば、  もう一方が浮き上がる。

あの日、  私が買ったのは櫛じゃない。

人間というものをまだ十分に理解していない自分自身だった。



—— 潯珩亂筆 | XC Scribbles · 貳玖 XXIX 🪞

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