学ばなかった知識、あるいは先延ばしにしていた知識は、 瞬きをする間に新しいバージョンに置き換えられてしまう。
昔、私は Photoshop の技術を必死に練習していた。 マスク、パス、レイヤー、ショートカット。 一つずつ覚え、順番に積み上げていく。 あの頃は、それが専門性であり、確かな努力だと思っていた。
今振り返ると、残る感覚はひとつだけ。 ――今は、ワンクリックで済んでしまうのだ。
当時の学びが間違っていたわけではない。 ただ、その努力は「別の時代」のものだった。 かつて不可欠だった複雑さは、 いつの間にか時代の脚注になっていた。
消えたわけではない。 結果に辿り着く唯一の道ではなくなっただけ。
そのとき気づいた。 人生も、同じ構造をしている。
私たちは、理解しようと焦ぎ、 補習し、追いつこうとする。 遅れること、逃すこと、準備不足を恐れて。
でも時間が経つとわかる。 その道は、必ずしも通らなくてよかったのだと。
すべての知識を埋める必要はない。 すべての空白を満たす必要もない。 学ばなくても、人生は流れていく。
それは怠惰ではない。 「変化」を信頼するという態度だ。
世界が更新され続ける中で、 大切なのは、どれだけ技術を持っているかではなく、 古い努力のバージョンを手放せるかどうか。
ある種の知恵は、 速く学ぶことではなく、 「もう学ばなくていい」と安心して言える瞬間に宿る。
—— 潯珩亂筆 | XC Scribbles · 參 III 🪶